5月上旬/運命のスレチガイ

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「……と、既にお持ちだったのですね」 「へっ?」 落とされた視線を辿ると、握り締めた拳の中で、無残にも丸まった名刺がコロンと寝返りを打つ。 「――あっ! すみません! 同期から奪って、夢中で走ってきたらつい……!」 「奪って?」 「だって、私はまだ頂いてなかったので……!」 動揺と、焦燥と、羞恥と。 宜しくない感情が混ざり合って、自分でも何を言っているのか分からなくなった私は、アスファルトの1点を見つめた。 ……穴があったら突入したい。 そんなことを考えていた頭の上で、ふっと笑う音がする。 「名刺なんて、いくらでも差し上げますよ」 清涼な香りが、ふわりと舞った。
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