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様々な花が咲きほころぶ庭園。
季節を無視するかのように競い合って咲く花々を、優しい風が撫ぜる。
その中に、墨を落としたように立つ影が二つ。
黒いドレスの女性と黒いマントの男性は、色とりどりの植物が溢れる庭園において異様だった。
しかし二人は迷いのない足取りで庭園を進む。
「じゃあ、お別れね」
石造りのアーチまで辿り着いたとき、女は男を振り返って言った。
その腕にはすやすやと安らかな寝息を立てた赤子が抱かれている。
男はいとおしげな目でその赤子の顔を見下ろした。
「願わくば、この子に幸あらんことを」
その言葉を聞いて女は小さく笑う。
切れ長の目が弧を描いている。
それを見て、男はむっとした表情を浮かべた。
「あなたがそんなことを言うなんて、なんだか滑稽だわ」
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