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いつもと同じ、いつもの朝。
「おばあちゃん、おはよう」
大家のおばあちゃんはアパートの前を掃く手を止めて、「おはようユキちゃん」と返してくる。
その表情に私も笑顔を向けて、学校へ向かった。
私、白倉ユキがここで暮らし始めて、もう十五年になる。
物心が付く前から父親はいなかった。
母親はいるにはいるんだけど、女傑を地で行くあの人は、家にいることなんてほとんどない。
仕事漬けの毎日だ。
生活費はきちんと貰ってるから、私は一人暮らしも同然だった。
いい大学入って国家公務員になってエリート街道突き進むのが私の夢!
寂しいなんて感情ありません!
親切な大家のおばあちゃんがお世話してくれたし、一人暮らしにも慣れたし、それなりに幸せに暮らしていた。
こんな日常に不満なんてなかった。
だから今のこの現状が信じられない。
私は「なにコレなんかのテーマパークですか?」と聞きたくなるようなお城の前にいた。
西洋のきらびやかなお城ではない。
どちらかと言うとお化け屋敷にありそうなお城だ。
わぁコウモリまで飛んでる。
今日から私はここで暮らすそうだ。
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