第一章 ようこそ魔界へ

2/13
76人が本棚に入れています
本棚に追加
/114ページ
いつもと同じ、いつもの朝。 「おばあちゃん、おはよう」 大家のおばあちゃんはアパートの前を掃く手を止めて、「おはようユキちゃん」と返してくる。 その表情に私も笑顔を向けて、学校へ向かった。 私、白倉ユキがここで暮らし始めて、もう十五年になる。 物心が付く前から父親はいなかった。 母親はいるにはいるんだけど、女傑を地で行くあの人は、家にいることなんてほとんどない。 仕事漬けの毎日だ。 生活費はきちんと貰ってるから、私は一人暮らしも同然だった。 いい大学入って国家公務員になってエリート街道突き進むのが私の夢! 寂しいなんて感情ありません! 親切な大家のおばあちゃんがお世話してくれたし、一人暮らしにも慣れたし、それなりに幸せに暮らしていた。 こんな日常に不満なんてなかった。 だから今のこの現状が信じられない。 私は「なにコレなんかのテーマパークですか?」と聞きたくなるようなお城の前にいた。 西洋のきらびやかなお城ではない。 どちらかと言うとお化け屋敷にありそうなお城だ。 わぁコウモリまで飛んでる。 今日から私はここで暮らすそうだ。
/114ページ

最初のコメントを投稿しよう!