『ついてない男』

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 講義が終わって戻ってみると 「見てくれよ、これ」  礼矢がそう言って折れ線グラフを見せる。 「何これ?」 「実験結果だよ! 百円の時は平均で28勝72敗、五百円では15勝85敗、千円だと8勝92敗だぞ!」  金額と勝率が見事に反比例している。 「この結果から推測すると、賭け金が十万を超えた辺りでほぼ勝率0%になる!」  興奮する礼矢と泣きそうな塚内君。  二択の勝負でどうやったらこんなに負けられるのか……  「塚内君、週末また来てくれないかな。頼みが有る」  言われた通り、週末オカルト研究会に行くと、礼矢の横にスーツを着た中年男性が居た。 「紹介するよ。母方の叔父さんで、相場さん」  礼矢に紹介されて、相場氏はにこやかな笑みを浮かべた。 「実は、買おうかどうか迷ってる株が三つ有ってね。値上がりしそうな銘柄を塚内君に選んで欲しいんだ」  相場氏はそう言って三種類の企業パンフレットを置いた。  S商事。K工業。Y電気。 「もし君が指定した銘柄が値上がりしたら十万円進呈しよう」 「えっと……じゃあこれで」  恐る恐る、塚内君がY電気を指定する。 「礼矢、どういう事だ?」  僕が耳元で囁くと、礼矢はニヤリと笑った。 「後で教えるよ」  結局その日はそれだけで終わった。  ところが、週明けから異変が起こる。  Y電気の株価が突如暴落し、僅か一週間で元値の半分以下になったのだ。
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