『ついてない男』

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 最初の客は相場氏の紹介。  そこから口コミで噂が広がり、一気に客が増えた。  投資家だけではない。  ヤクザの組長が来て、競馬の予想をさせられた事もある。  どこで噂を聞いたのか、なんと刑事までがやって来た。 「二丁目のバーで女が殺された。犯人が逃走した方角を教えて欲しい。君の予想が当たったら十万払おう」 「えっと……じゃあ西で」  塚内君の予想を聞いて刑事が部下に指示を出す。 「全捜査員を東に向かわせろ!」  犯人はその日のうちに捕まった。  塚内君、恐るべし。 「なんか僕が外して君が儲けるってのは納得行かないな」  塚内君が不満を漏らす。 「でも利益を塚内君に還元すると、多分外れなくなっちゃうと思うんだ」  それを憂慮して塚内君には固定で月に十万渡してるのだ。  まぁ僕の儲けはもう二百万を超えてるけどね。 「一度くらい試してみようよ。でなきゃ僕はもう予想しない」  塚内君が頑固に言い張るので、一度だけ試してみることにした。  儲けは折半。  すると、思った通り塚内君の予想が当たってしまい、客は激怒した。 「これでわかったろ?」 「はぁ……なんてこった」  がっくりと項垂れる塚内君。  可哀想だけど、しょうがない。  次からはまた元通りに戻す事に決め、事務所を出た所で、黒ずくめの男数人に囲まれた。 「我々は香港マフィアだ。君達に用が有る」  香港マフィアって……ここは日本だよ? 「用って、何ですか?」 「後で話す。大人しく付いて来い」  って、拳銃持ってる!  僕達は車で空港まで連れて行かれ、結局飛行機に乗せられてしまった。  4時間半のフライトで香港に着き、空港から車で15分。  連れて来られたのは豪華ホテルのスイートルーム。
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