『ついてない男』

5/9
前へ
/26ページ
次へ
 最初の客は相場氏の紹介。  そこから口コミで噂が広がり、一気に客が増えた。  投資家だけではない。  ヤクザの組長が来て、競馬の予想をさせられた事もある。  どこで噂を聞いたのか、なんと刑事までがやって来た。 「二丁目のバーで女が殺された。犯人が逃走した方角を教えて欲しい。君の予想が当たったら十万払おう」 「えっと……じゃあ西で」  塚内君の予想を聞いて刑事が部下に指示を出す。 「全捜査員を東に向かわせろ!」  犯人はその日のうちに捕まった。  塚内君、恐るべし。 「なんか僕が外して君が儲けるってのは納得行かないな」  塚内君が不満を漏らす。 「でも利益を塚内君に還元すると、多分外れなくなっちゃうと思うんだ」  それを憂慮して塚内君には固定で月に十万渡してるのだ。  まぁ僕の儲けはもう二百万を超えてるけどね。 「一度くらい試してみようよ。でなきゃ僕はもう予想しない」  塚内君が頑固に言い張るので、一度だけ試してみることにした。  儲けは折半。  すると、思った通り塚内君の予想が当たってしまい、客は激怒した。 「これでわかったろ?」 「はぁ……なんてこった」  がっくりと項垂れる塚内君。  可哀想だけど、しょうがない。  次からはまた元通りに戻す事に決め、事務所を出た所で、黒ずくめの男数人に囲まれた。 「我々は香港マフィアだ。君達に用が有る」  香港マフィアって……ここは日本だよ? 「用って、何ですか?」 「後で話す。大人しく付いて来い」  って、拳銃持ってる!  僕達は車で空港まで連れて行かれ、結局飛行機に乗せられてしまった。  4時間半のフライトで香港に着き、空港から車で15分。  連れて来られたのは豪華ホテルのスイートルーム。
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

24人が本棚に入れています
本棚に追加