『ついてない男』

6/9

24人が本棚に入れています
本棚に追加
/26ページ
「ボス、指示通り二人を連れてきました」  黒ずくめの一人がそう言うと、太った中国人が目を細めて頷く。  こいつがボスか。 「君達の噂は聞いてるよ。大活躍だそうじゃないか」  おいおい、いつの間に香港まで噂が広まったんだ? 「日本のヤクザに手を貸したそうだネ。我々にも協力して欲しいネ」  そうか。あのヤクザの組長か。 「協力って、何をすればいいんですか?」 「こっちに来たまえ」  ボスに付いて隣室に行くと、カジノに有るのと同じ様なルーレットが置かれていた。 「これから敵対組織と縄張りを賭けて勝負することになってるネ。赤か黒か。塚内君にそれを予想して貰う。予想が外れればOKね」 「も、もし当たっちゃったら、どうなるんです?」 「その場合、塚内君には1万ドルを支払うよ。君は九龍湾に沈んで貰うことになるがネ」  僕は震え上がった。 「塚内君、絶対外してくれよ!」 「う、うん。全力を尽くすよ」   なんとも頼りない。  神様、じゃなくて貧乏神様、どうか僕をお救け下さい!  僕が柄にもなく祈っていると、敵対組織のボスが現れた。  後ろにモデルの様な金髪美女を連れている。
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

24人が本棚に入れています
本棚に追加