『ついてない男』

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「今日は勝たせて貰うよ。切り札を用意してあるのでネ」  ボスがそう言って塚内君を見る。 「ほう、その男が切り札かね? 俺には疫病神にしか見えんが」  疫病神……惜しい。ニアピン賞。 「彼が向こうの切り札だそうだ」  敵ボスがそう言って後ろを見ると、金髪美女が微笑で応えた。 「彼女は通称”ミス・ラッキー”。恐るべき強運の持ち主だ。今まで何度も彼女にやられてるネ」  ボスが僕に耳打ちする。 「まぁどちらが強運か、やってみればわかる」  敵ボスはあくまで強気。  でもちょっと塚内君を誤解している。  不正が無いように、ディーラーが目隠しをされる。  ルールは至って簡単。  ディーラーがルーレットに球を投げる。  その後、双方が赤か黒かを書いた紙を卓に置く。  当った方の勝ち。  両者当りの場合は再勝負。  第一投目、塚内君の予想は黒。  ボスは当然の如く赤と書いた紙を卓に置く。  球が入ったのは赤の18番。  が、敵ボスの書いたのも赤。  引き分けだ。  僕はもう心臓が破裂しそうだった。  万が一、塚内君の予想が当ってしまったら、海に沈められちゃうのだ。  息詰まるような緊張の中、なんと12回連続で塚内君は予想を外し、ミス・ラッキーは予想を当てた。  まさに死闘。塚内君の凶運も尋常じゃないが、ミス・ラッキーの強運も凄まじい。
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