『ついてない男』

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 そして13投目、塚内君が突然頭を抱え込んだ。 「どうしたの、塚内君?」 「わからない。赤も黒も、どっちも来そうなんだ」 「どっちも来るって、そんなこと有るワケないだろ!」  横目でちらりとミス・ラッキーを見ると、彼女も眉間に皺を寄せて考え込んでいる。  どうやらこの13投目が正念場らしい。 「ああ、決められない。絶対どっちも来る気がするんだ」  だから、それは有り得ないって…………あっ!  その瞬間、僕の身体に電撃が走った。  大慌てでボスに耳打ちをする。 「間違い無いのだろうネ?」 「た、多分」  ボスが躊躇いながら予想を書く。  どうやら敵ボスも決断したようだ。 「球が止まる前に確認しておくが、緑でも良いのだろうネ?」  ボスの言葉に敵ボスが笑う。 「そりゃ構わんが、正気かね?」  緑は0と00の二箇所だけだ。  赤、黒に比べて極端に分が悪い。  敵ボスの予想は赤。  球の回転が緩くなり、下に落ち始める。 (頼む! 貧乏神様、お願い!)  僕は必死に祈った。  一旦赤の27に入りかけた球が、もう一つ転がって00に入る。 「やった!」  僕は思わず叫んでいた。  塚内君は疲れ果てた顔で座り込んでしまっている。  その塚内君に、ミス・ラッキーが歩み寄る。 「ミスター・ツカナイ、あなたの強運は素晴らしいわ。私、生まれて初めて男の人に負けた」  ミス・ラッキーの蒼い瞳が、少女漫画の主人公の様にキラキラ輝いている。  ひょっとして、恋する乙女?  でも彼女は壮絶な勘違いをしている。
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