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とにもかくにも、なんとか危機を脱した。
僕も塚内君も疲労困憊。
「しばらく休まない?」
塚内君の提案に
「うん。一ヶ月休業しよう」
僕も賛成した。
精神的疲労を癒やすには、今持っている金で豪遊するのが一番だ。
どうせ再開すればまたすぐに金は貯まるのだ。
それから一ヶ月、僕は金を使いまくった。
家賃二十万のマンションに引っ越し、競馬、パチンコ、キャバクラ通い。
一ヶ月が過ぎてお金が尽きた頃、塚内君の家に行ってみると、驚いたことにミス・ラッキーが居た。
「僕達、結婚したんだ」
「結婚!?」
「うん。こんな美人に迫られたら断れないだろ」
つまり、ミス・ラッキーがミセス・ツカナイになったワケだ。
「で、仕事のことなんだけど、多分もうダメだね」
「ダメって、どういう事?」
「彼女と結婚してから、なんか運が上向いて来ちゃってさ、競馬も麻雀も結構勝つんだ」
「嘘でしょ?」
「本当。でもその代わり、彼女の運が前より落ちちゃってね。なんか複雑な気分だ」
「……なんてこった」
塚内君に憑いていた貧乏神とミス・ラッキーに付いていた幸運の女神が相殺されて、二人とも平運になってしまったのだ。
こうなると豪遊が悔やまれる。
所持金ほぼゼロ。マンションは即解約しなきゃならないし、事務所も引き払う必要が有る。
意気消沈して事務所に向かうと、廊下でミレルノさんと鉢合わせした。
「事務所たたむ事になってね。ミレルノさんともお別れだ」
「……」
「どうしたのミレルノさん?」
「……見えます」
「へっ?」
「あなたの後ろに貧乏神の姿が、ハッキリと」
ー 了 ー
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