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「・・・ねーね。」
「違うよ、たっくん!
私の名前は“美音”だってば~!!」
何度教えても間違える。
私の名前は“ミネ”なのに、たっくんはいつも私の事を“ねーね”と呼んだ。
「たっくん、今日は何の絵描いてるの?」
「・・・。」
彼はあまりお喋りをしない。
花模様が付いたビニールのテーブルクロス。
そこに置かれた画用紙の束。
彼はクレヨンを握り、一心不乱にお絵描きを続けている。
いつ遊びに来ても同じ事の繰り返し。
だけど、そんな彼の行動を眺めている事が私の楽しみでもあった。
「おばちゃん!
今日もたっくん、1人で運動会してたんだよ?
運動会は秋に終わっちゃったのにねぇ?」
たっくんのママは私の言葉に苦笑する。
そして一緒にお茶を飲んでいた私のママは、はっとした表情を浮かべて「すみません」と謝った。
たっくんはいつも自由気儘。
私たちが幼稚園で体操をしていても、1人だけ教室でお絵描きして遊んでる。
そして私たちがお弁当を食べていると、今度は1人で園庭に行きかけっこを始めるのだ。
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