生き甲斐を奪われて

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「魔法…剣士…?」 ことも無げに言い放たれたその言葉を聞き、俺は一瞬思考が停止する。そして。 「ブッフォ!!」 「なっ、何がおかしいの!」 笑いをこらえることができなくなった。でっぷりと肥えた腹を抱えて、もんどりうつように笑い転げた。 「失敬失敬、お前さんが大真面目な顔で魔法だの剣士だの言うもんでおかしくて…!中学生のイタい妄想ってレベルじゃあねーぞ!」 「イタ…っ!?」 俺はこうして笑ったりしてテンションが上がると、どうしても変な喋り方になってしまうというのが幼少の頃からの癖なのだ。これで「来場君が何か言ってる」と後ろ指を指された経験など、もはや両手の指では収まらないレベルだ。 「オッドアイの氷の魔法剣士…!黒歴史まったなし!だが昔の自分を思い出して死にたくなってもとどまれよ、人間は思春期に少年から大人に変わ…」 そこまで言うと、いつの間にかその女は俺の目の前にまで移動していた。そしてその黒い手袋に包まれた手を伸ばし、俺の腹を鷲掴みにする。 「ひぎぃ!」 見た目以上に握力が強いらしく、腹の脂肪がギリギリと悲鳴をあげ、俺もつられてあられもない声を出してしまう。 「それ以上言ったら霜降り肉にするよ」 「どんな脅し文句!?つーか霜振り肉って冷凍した肉って意味じゃないかんね!?ていうか謝るから手ぇ放してくださいごめんなさい痛いっす!!」 「いや。許さない…ん?」 俺の必至の懇願も聞かず腹肉を抓っていたその女は俺の足元に目をやると、突如手を離して屈んだ。触ってみると確かに、その手が触れた所は氷を当てたかのように冷たい。というか目の前で屈まれると、その肉付きのよい胸元が露になるので理性的によろしくないのですが。 「これ…」 「ん?あ、落としてたんね」 足元にはペンライトが二本転がっていた。しかもドタバタのはずみでスイッチが入ったらしく、電球部分がぼんやりと輝いていた。俺は両手にそれを拾い、またポケットにしまい込もうとする。 「……」 だが、その手はその女の手によって止められた。ポケットに仕舞おうとした手を握って止めるため膝立ちになり、腹の辺りにその整った顔がくる。何だかいけないことをしているような気分になり、俺は少しドギマギしてしまった。 「な、何?そんなにこれが珍しい?」 「……光の聖剣デュアルメサイア……?そんな、まさか……」
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