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そう視認した時には、野外会場にもざわざわと声が広がっていた。紛れもなく、その声は動揺に揺れている。すると、ステージ上の一人の少女が前に出て、スタンドマイクを取る。あれはメンバー最新加入の中田カナだ。お団子ヘアーが特徴のカナの目は、会場以上に不安そうに揺れている。
「カナちゃーーんどうしたーー!?」
「…み、皆さんにお伝えしたいことがあります!」
「神4がおらぬではないかーーッ!」
『神4』。
メンバーの人気を決める投票総選挙にて選ばれた、24人を束ねる名実共の四天王である。歌を歌う際にもセンターを陣取る、まさにチームの顔なのだ。本来なら、ライブのMCだってカナのようなペーペーではなく、その4人の内の誰かが行うはずなのだ。あまりにも神4を推しすぎるのを是としない俺でも、彼女らの不在は不安を呼んだ。
「じ、実は…」
カナの言いにくそうな声が、会場の静寂を誘う。しかしカナは決心したように、マイクを掴んで言う。
「神4の皆さんが……ド、ドラマの撮影中に、行方不明になってしまって……。今も捜索中なんです…!」
衝撃の告白に、会場全体から叫び声が挙がった。安否を気遣う声と、行きすぎた想像をし過ぎて絶叫する声。いずれにせよ、会場は阿鼻叫喚の声に包まれる。
「…そこで、先ほど暮西プロデューサーから発表がありまして…。神4が見つかり、このステージに立てるその日まで……」
声も失くしていた俺の耳に、やけにそれが鮮明に聞こえた。
まさか。
冷や汗なのか脂汗なのかわからない液体が、暑さと無関係に額を流れる。
「――AKB24は、無期限で活動停止します」
「…んあああぁぁぁぁぁぁぁぁ!?冗談はやめてくれぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
今度こそ俺は、吐血せんばかりの勢いで空に吠えた。
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