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「ふ、ふははは!天も泣いておるわ!」
俺はつい意味不明なことを口走り、しかしいそいそと投げ落としたペンライトを拾い上げた。さすが我が相棒と言うべきか、傷一つついていない上電球にも損傷はなかった。俺はそれに一息つき、何の気なしに色変更のダイヤルに指を伸ばした瞬間だった。
「…んん?」
心なしか、普段よりも光が強い気がする。この暗がりで点けているからそう感じてしまっているのだろうと、俺はようやく電気を点ける気になった。ところが、紐を引いても電気は点かない。先ほどの落雷は随分近かったようだし、それで停電でもしているのかもしれない。
「って…やはりッ!コイツは…気のせいなんかじゃあないッ!」
少し目を離した隙に、ペンライトの光は明らかに強まっていた。普段は蝋燭ほどの明るさしかないくせに、今は白熱電球もかくやという猛烈な光量で、眩いとすら感じるほどである。先ほど投げ落とした衝撃でLEDが壊れてしまったのだろうか?
「し、静まりたまえー!」
俺はその眩く輝くペンライトを握り締め、電源スイッチを落とす。しかし何故か、スイッチを切ってもその光は止むことがなかった。これは故障とかそんなチャチなものでは断じてない。そう考えるまでに、最早理屈などいらなかった。
「…こ、これは一体…」
そう一人ごちた次の瞬間、ペンライトの光はピークに達した。まるで爆発するように光が拡散し、アイドルグッズが散乱する部屋の四方をくまなく照らし、至近距離の俺の目を灼いた。
「うおっまぶしっ」
思わず目を庇う俺。厚い掌で顔を庇っても、何故か視界が白い輝きに満ちていく。そして強い光を近距離で直視したからか、まるで飛蚊症のように水色の光で縁取られた、見覚えのない記号のような物がいくつも螺旋階段のように伸びて行く。そしてエアコンなど点いているような立派な家ではないはずなのに、俺の全身を強い風が包み込んだ。
「ぬ、ぬわーーーーっ!?」
もう何もかもがメチャクチャだ。俺の灰色の脳では処理が追いつかないほどの超常現象の連続に最早叫ぶことしかできない俺は無我夢中で叫んだ。そして。
俺は意識を暫しの間、その眩い白の闇の中へと投じる事となった。
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