第6章

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顔を背けてしまっては、男の胸板に何かしら意識していると言っているようなものだ。 (違う、断じて違う!) 慌てて弁解しようと太一を見た志藤だったが、りんご飴を片手に持つ太一があまりに可愛く美化され、志藤はなんじゃこりゃ!と赤面してしまった。 (あ……れ、れ?た、たいちゃんこんなに可愛いかったかな…?) 佐久間と菊池の会話から知ることになった未知なる世界。 その世界に手招きしたのは黒野と猫居。 そして引きずり込もうとするのは、 鈍感な太一の無防備な笑顔だった。 咄嗟に言葉が出てこなくて、金魚のようにパクパク口を動かした志藤だったが、 救世主のごとく現れた男に、志藤ははっとして叫んだ。 「ゆ、雪村さん!」 小首を傾げていた太一も、ドギマギしていた野瀬も、携帯を弄っていた中原も、志藤の叫び声にハッとして後ろを振り返った。 そこには、「え?」とこちらに気付いた雪村が確かに立っていた。 「う……っわ!」 本物の雪村に野瀬は抑えきれずに声を漏らした。しかしその声は中原の声に掻き消される。 「おわ!本物!?」 「あ、太一じゃん。志藤も?」 ニコニコとカッコいい笑みを浮かべ、雪村がタタッと四人に駆け寄ってくる。 野瀬の声にならない叫び声。 中原もまた目を輝かせた。 雪村とハイタッチで挨拶を交わすと太一は、親友のお出ましにその表情を緩ませた。 「来てたんだ、ユキ」 「おぅ。この夏、今日くらいしか花火見れそうになかったからさ」 生で見る雪村の格好良さ、透るような声。 圧倒的なオーラ。 野瀬と中原は二人並んで、ただマジマジと雪村を見つめていた。 「雪村さんもお友達とですか?」 そこに志藤も混じり、 エッグバトルではお馴染みの月曜組が揃った。 「いや、俺は親と来た」 そう言って振り返ると、そこには優しそうな母親が一人立っていて、キョロキョロと息子を探している。 「母さん、こっち!」 母親は雪村と一緒に太一と志藤の存在に気付き、ぺこりと頭を下げるとゆっくりと歩み寄って来た。 「お母さんと来てるんですね。雪村さん優しいなぁ」 志藤はにっこりと微笑む。 太一もまた柔らかく笑った。 「ま、俺母子家庭だし。たまにはね」
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