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「バカな事、考えてないよねっ?」
「え? ……っていうか、ちょっと……」
ザ・体育会系の顔立ちに、下から覗き込まれる。まるで、タックルされているみたいだ。というか、何故に目が潤んでいる?
「何なんですか? 一体……?」
涙を拭うのも忘れ、謎の人を押し退けた。しかし、がしっと両肩を掴まれる。
「力、つよ……」
「お財布の中」
「はっ?」
もう何が何だかわからない……俺はただ、ここでカナを偲んでいただけなのに……!
「だから、お財布っ!」
「財布が何ですかっ? まさか……新手のカツアゲ?」
「ちーがーうーっ! アレ、入ってるんでしょ?」
「アレ?」
「だーかーらー……」
そこで男の人は口ごもる。恐怖よりも先に芽生えたのは興味だった。
「だから?」
「……ド……ム……」
「え?」
耳を澄ます。すると、突然……!
「だからっ! コンドームッ!」
考えもしなかった単語が飛び出した。そして同時に理解した。
その小さな秘密を共有しているのは……たった一人だけ。
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