真夏の大三角形

5/15
前へ
/17ページ
次へ
 実は、そろそろ不安になっていた。最初はパパやママ、コウや学校の友達の嘆きが辛かった。だから離れがたくて。  だけど、彼らは生きている。前に進んで行かなくてはならないのだ。  では……私は……? 『このまま地縛霊パターン? でも未練なんて……そりゃあ、ないと言ったら嘘になるけど……』  約束、していたのだ。  陸奥屋百貨店。私が生まれる前から、ずうっとこの街にあった場所。そこもコウとの思い出にあふれていた。  しかし今日、その場所は惜しまれつつもなくなってしまう。 「最後の日、一緒に行かないか?」  あの日のコウの姿に、胸の奥が小さく鳴る。 『コウ……』  その時だった。 「北川君」 「牧瀬?」  どうして? 屋上に続く階段。コウと……私の親友、リエがいた。 「どうした?」 「あっ……あの……」  本当に不思議そうな表情をコウは浮かべ、三段下に立つリエへと一段下がる。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加