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『カナちゃんっ!』
私を見つけるなり、全速力で駆けて来た。
『どこいってたのよーっ!』
『ず……ずっと、ここにいたよぉ』
ぐずっているから、からかいたくなる。
『コウちゃん、泣いてるーっ!』
『ちっ、違うよっ! 泣いてないよっ!』
むきになって否定する、その鼻の頭を指先でちょんと押した。
『うそつくと、ピノキオになるんだよ?』
『えっ!』
慌てて両手で押さえたね。いつも側にいてくれた……大切な大切な幼なじみ。
伝えたい事がある。でも、どうしたらいい?
その時、暗がりのベンチに誰かが現れた。裸にパンツ、若い男の人だった。疲れきっているのか、荒い息を吐きながら、ガウンを羽織ろうとしている。
『あの人……さっき特設会場で、ジャーマンスープレックスされてなかった? あれ? 四の字固めだっけ?』
何人か試合をしていたから、わからなくなる! そう思ったら、ぐんって体が引き寄せられた。
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