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「はい、お電話代わりました。川見でございますが」
『テンチョーさん、ウチ。梨々香』
「…梨々香さん?」
思いがけない相手で、つい聞き返してしまいました。
「どうなさいました?」
『ねー、すぐ来て』
「はい?」
『キンキュージタイなの。今すぐ来てよ』
「あの、どちらへ」
『お祭り。早く来ないと帰っちゃうからね』
訳も分からずいると、声は唐突に途絶えてしまいました。
「どうしたんですか?」
私が受話器を持ったまま呆然としていると、清水さんが不思議そうに訊ねてきました。
「キンキュージタイ、って…梨々香さん」
「立花さまのお孫さんですよね?私も誰かと思ってビックリしたんですけど…」
「縁日にすぐ来て欲しいっていうのよ」
浴衣が着崩れでもしたのだろうか。そんなはずはないけれど…と思い巡らせていると、池谷さんが私に笑顔を向けてきました。
「店長、行ってみてはどうですか?」
「あら、でも…」
「もしたいした用事でなければ、そのまま少しいてもいいじゃないですか。あとは私たちが店番してますから。ねえ、清水さん」
「はい、大丈夫です。立花さまも一緒でしょうし、店長も楽しんで来てください」
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