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ふたりに後押しされて行く気になったのは、私もどこかで、夜の縁日を見てみたい気持ちがあったからだと思います。
それにしても、緊急事態とはなんだろう、と私はエレベーターの中で少し気を揉んでいました。
今まで何百回と着付けを行ってきましたが、着崩れした、と聞いたことはないのです。
しかも、重い衣装ではなく浴衣です。
なおさらそれは考えられません。
もしや、立花さまが体調を崩されたとか…
そう思うと、エレベーターが屋上に着くまでの短い時間すらもどかしく感じられました。
転がるように屋上に飛び出した私は、一瞬辺りの景色に目を奪われました。
イルミネーションに彩られ、ライトアップされた観覧車。
揺れるカンテラや、光を反射してキラキラと揺れる、金、銀、極彩色の吹流し。
薄い煙を吐きながら回るミニSLに跨る子供たちはもちろん、観覧車に並ぶ人の顔でさえも笑いさざめいていて、屋上全体で、真夏の夜のひとときを楽しんでいます。
人々の中、梨々香さんを探すのに、さほどの苦労はありませんでした。
エメラルドグリーンの無地に近い浴衣にオレンジの帯。
帯留めについた赤い玉飾りは、長い金髪を高い位置で丸めた髪型にさした玉かんざしとお揃いです
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