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けれど思えば、子供くらい年齢の離れている梨々香さんに、大人げなく本気で腹を立ててしまうほど、私の胸は揺らいでいたのでしょう。
そして、長い間そんな感情を抑え続けていた私とは違い、梨々香さんはとても素直に、当たり前のようにそれを語りました。
「怒らなくたっていいじゃん。好きな人がいるってカッコいいよ」
「そういうんじゃありません。それに盗み聞きなんて良くないですよ」
「だって分かっちゃったんだもん、テンチョーさん、ウチと一緒だって」
「一緒?」
すると、梨々香さんは隣に立っている彼氏くんの肩にコツンと寄りかかり、今までで一番可愛らしい笑顔で言いました。
「ウチは、たぁクンにマジ惚れ。世界で一番好き。テンチョーさんもそうなんだ、ってキュンキュン響いて来たの」
観覧車のライトアップを背にしているのに、その頬がふわりと赤らむのが分かりました。
たぁクンと呼ばれた彼は、梨々香さんの頭を肩にのせたまま、照れ臭そうにしています。
…一気に、抵抗する気力が失せました。
世界で一番。
その言葉に、年甲斐もなくときめいてしまったのです。
「だから、ねっ」
ぽん…
梨々香さんが、柔らかい手つきで私の肩を押しました。
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