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自嘲気味な物言いが、かえってもの悲しく聞こえ、何と返事をしたらいいか分かりません。
するとその人は、場の空気を変えるように、急に明るく話し出しました。
「いやあ、でもさっきは面白かった。そこのステージでね、ちょっと本格的な技を見たよ」
「技?」
「ジャーマンスープレックス。知ってる?相手を逆さまに持ち上げて、背中から落とす大技だよ。」
清水さんたちが話していた、営業部の男性の催し物だとすぐに分かりました。
「あれは素人では無理なはずなんだ。特に投げられる方はちゃんと受け身が取れないと、下手したら頸椎骨折だからね」
「まあ、そうなんですか?」
「うん。あの人はたぶん、セミプロかなにかの人だろうね。かなり鍛えた筋肉質な体をしていたし、何より立ち回り方が素人じゃなかったよ。ちょっと失敗して失神してたけど、大丈夫だったかな」
そういえばこの人、格闘技観戦が趣味だったんだっけ…
好きなことには夢中になって、一生懸命語り出す癖が出て、私はつい、クスッと漏らしてしまいました。
「あ、今、変わらないなあ、とか思ったね?」
「…ええ、分かります?」
「分かるよ、僕も思ったから」
声を揃えて笑いながら、私は20年の年月を飛び越えた感覚に襲われました。
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