夜明け前まで

9/30
前へ
/32ページ
次へ
『川見』のある6階のフロアには、他に和洋食器と雑貨の店、ギフトショップ、寝具売り場など、どちらかといえば日常的な需要の少ない店舗が集まっています。  それでも、完全閉店セール期間に入ってからは、各店舗の売りつくし品がお目当てのお客さまで、近年にない賑わいを見せていたのですが、午後6時近くなり、だいぶフロア内の人の姿が減りました。  そろそろ地下の食品街で、早い店では最終売り切りセールを始める時間です。  おそらく屋上の縁日も、夕立が上がって人が増え始めているでしょう。  営業や総務、経理部などの社員さん達が、趣向を凝らした出し物をすることになっていて、楽しみにしているお客様も多いと聞きました。    閉店まで、あと3時間あまり。   「清水さん、池谷さん、ここはいいから、少し屋上を見に行ってみる?」  私は、パート店員のふたりの女性に声を掛けました。  今店内にいるお客様は、立花さまと梨々香さんだけ。  これ以上、たて込んで来ることはないと思われ、朝から忙しい思いをしていたふたりに、最後の時間を楽しんでもらう事にしたのです。   「店長、よろしいんですか?」 「大丈夫よ、8時頃に戻って来てくれれば。もし手が回らなくなったら連絡入れるわ」
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

39人が本棚に入れています
本棚に追加