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「淳くんはどうやって帰るの?」
「俺はそこで電車乗るんで。
羽山さん姉ちゃんよろしくです。
ごちそうさまでした」
「うん、気を付けて」
彼は片手を高く上げて笑顔で手を振って帰って行った。
「良い子だな」
ぽつりと呟き、隣の今にも寝てしまいそうなたれ目の人に目を向ける。
「先輩、タクシー乗ります?」
「まだ電車あるから」
1人で帰れる気でいるのか、この人は。
「先輩、心配だからタクシー乗ってください」
「大丈夫」
す、と立ち上がりまっすぐ歩き出す。
「……」
くる、と振り返り先輩はにやっと笑った。
「優しいね、羽山は」
「は?」
「酔ったふり、とか考えないの?」
「……先輩に限ってそれはないと思ってます」
「……私も自分でそう思う」
「ほら、そういう所」
真っ直ぐで計算の出来ない所
「だから、貴方の事が……」
そう言いかけて、言葉が止まった。
先輩の視線がふわっと宙を舞う。
「羽山?」
首を傾げながら後方に倒れて行く。
「酔ってるじゃないですか」
駆け寄り肩を咄嗟に支えた。
「あ、すいません」
俯いた先輩が敬語で謝る。
「すいませんて」
思わず笑ってしまう。
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