第1章

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結局タクシーに乗り込んだ。 「羽山先おりて」 「……」 「タクシーだし、大丈夫だから」 「だったら尚更、先輩のとこ行ってからだって変わらないです」 「うん、でも大丈夫」 「……」 先輩は窓の外を見ながら頑なに自分を拒む。 ウインカーを出して左に曲がろうとしている運転手に 「すみません、このまままっすぐ行ってください」 と、伝えると 「羽山」 先輩が此方に顔を向けて怒ったような声を出した。 「泊まります。それならいいでしょ?」 「……っ」 眉間にぐっと力を入れて唇を結んだ。 「……話は後で聞きます」 「……」 「何かあったでしょ」 「…………」 睨む様に向けられた視線を外して先輩は外を見た。 それからタクシーからおりて部屋の鍵を開けて中に入るまでずっと無言のまま。 パタン 扉が閉じられた玄関は真っ暗で、開いたリビングの扉の向こうにカーテンの閉められていない窓がうっすらと灯りを含んでいるのが分かる。 電気に手を伸ばす先輩の手を掴んだ。 「何?」 「それはこっちが聞きたい」 「……」 「何で急にそんな避けるみたいな態度取るんですか?」 目が慣れて来て、先輩の表情がうっすらと分かる。 視線を伏せて顔を背けている。 「草間さんに何か言われた?」
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