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「唇、柔らかい」
「……」
「なんか、してる?」
唇を撫でるように人差し指を横に動かす。
先輩はその指を払って手で口を隠した。
「知和」
名前を読んでも下を向いたまま。
髪の上からキスをして
前髪を人差し指で流して
おでこにキスをした。
先輩は手で口を押さえたまま
きゅっと目を瞑る。
とん、と壁に片手を着いて
口元に置いた先輩の手にキスをした。
その時ぱっと、目を見開いた先輩の視線を3センチの距離で捉えた。
ピクリとも動かず固まっていた先輩は
もう片方の手でそっと自分の目を塞いだ。
……何その反応。
可愛いんですけど。
パチ
自分の行動を止める為にも電気を点けた。
「入りましょう」
一歩距離を取った自分を見て
両手を脱力させた先輩は
肩の力を抜いて靴を脱いだ。
「泊まっても、平気ですか?」
振り向いた先輩は視線を落とした。
「うん、羽山が大丈夫なら」
「……もうちょっと可愛い事言って下さいよ」
顔をしかめた先輩が、斜に構えて見上げてきた。
「ほら、これも練習です」
玄関に立ったまま、首を傾げて促した。
先輩は暫くその場に立ったまま、不機嫌そうに下唇を噛んだ。
そして、ゆっくりこちらに近付いて距離を詰めて目の前で止まった。
す、とスーツの裾を摘ままれる。
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