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「花街に住んでるの?」
そう聞くと男の子が首を横に振った。
「違う……」
「じゃあどこに住んでるの?」
「……っ。言ったら……僕を食べる……?」
涙目でそう聞かれて固まる。
その『悪魔街の人間は人を食べる』ってどこから出た話なんだろう。
こんな小さな子にまで言ってるなんて……。
「あのね、信じてもらえないかもだけど、私達は人は食べないよ」
「だ、だって……、大人は皆言ってるよ?」
「そうだね。じゃあ、早くここから出ないとね」
私はモーリスの手を握って男の子を見た。
「ついておいで」
男の子がついて来てるのを確認しながら歩き出す。
悪魔街の入口の門まで来ると私は男の子を振り返った。
「ここから出れば城下町に出れるよ。城下町なら家に帰れるよね?」
「え……?」
「ここはきっと恐ろしい場所だって教えられてるよね。だからもう近付いちゃダメだよ。また怖い思いするから」
不思議そうな男の子。
それから手をモジモジさせた。
「……ありがとう」
「ううん」
「あ、あの……っ。おねぇちゃん、名前、何?」
「私?セナだよ」
「君は?」
男の子がモーリスを見る。
モーリスは笑顔で男の子を見た。
「僕はモーリス!」
「セナおねぇちゃん……モーリス……。ありがとう……」
男の子が走って行く。
それを見届けて私とモーリスは引き返した。
この街から一歩も外に出てはならない。
何故なら私達は『穢らわしい存在』だかららしい。
……皆普通に生活してるだけなのにな。
モーリスは近くにいた人とボール遊びをすると言って私から離れていった。
私は花園へ向かう。
ここにいる時だけは、何故か幸せな気分になれるから。
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