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常に真っ暗な街、悪魔街。
物心ついた頃から私はこの街にいた。
お父さんもお母さんもいない。
そうだ。
私は捨てられた。
悪魔街のリーダーであるキッドに育てられた私は、この街の人達を家族だと思ってる。
きっとみんなもそうだ。
だってここにいるのは大体が他の街から捨てられた人達だから。
他の街の人達から疎外されてる私達。
そんな私達が、王家の人間と出逢えるなんて思ってもみなかった。
今日までは。
「セナ!おはよう!!」
「おはよう、モーリス」
私の足に抱き着く小さな男の子、モーリス。
いつも笑顔でとても可愛い。
モーリスは私の弟みたいなものだ。
モーリスの頭を撫でてキッドに近づく。
キッドは欠伸をしながらボールペンを回していた。
「おはようキッド」
「ああ、おはようセナ。相変わらず美しいお姫様だね」
「……その歯の浮くようなセリフ、毎朝言わなきゃダメなの?」
「うーん、だぁめ」
悪魔街の隣に隣接している街、花街の出身であるキッドはいつもこんなセリフを言ってくる。
そんなキッドを無視して冷蔵庫から賞味期限が切れた牛乳を取り出した。
食べ物の配給も、ここは一番最後。
所謂残飯だ。
そんなもの食べてもお腹を痛める事がないのは、私達がそれに慣れてしまっているという事。
「で?キッドはまた頭悩ませてんの?」
「うーん、そうなんだよ。また無理矢理奴隷労働させられてる人が出てきちゃってさ」
「そう……」
「別に働かなくても、アリアが残飯持って来てくれるから食べ物には困らないんだよね。ていうか、『お前らはこの街から出てくるな』とか言われちゃってるしねー」
アリアは配給をしているお城の人間。
綺麗な街の綺麗な人間だ。
そして私達を他の人間みたいに『汚いモノを見る目』で見てこない唯一の人。
私達はアリアの事は信用している。
「犯人は?分かってるの?」
「分かってるよ」
「じゃあ取り返しに行ってくるよ」
そう言って私は近くの木刀を手に持った。
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