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「貴方がこの街のリーダー?」
「え!?は、はい!!」
キッドは慌てて立ち上がると王子様に頭を下げた。
「やめてくれ。頭を下げるのはこちらの方だ。すまなかった」
王子様はキッドに頭を下げた。
それを見てザワつくみんな。
私も目を見開いた。
「君達を無理矢理連れてきて労働をさせていたのを知らずに今まで生きていた事を本当に悔やむよ」
「え!?いや!!やめてください、リオ様!!」
キッドは気まずそうに頭をかくと咳払いをした。
「うーん。確かに無理矢理連れて行かれる事には困っていました。でもそれはリオ様が悪いわけではありません。リオ様はこうやって謝る為にここに来てくださった。そんなリオ様を僕達が怒れる訳がありません」
「でも……」
申し訳なさそうな王子様。
私は王子様に近付いた。
「リオ様……?」
「君……」
「私には、貴方が恐く見えません」
「え?」
「リオ様は何も悪くないのに、こうやって謝りに来てくれた。この場所に来るのは嫌なはずなのに。ここの人達はリオ様を信頼しています」
そう言うとみんなもリオ様に笑いかけた。
リオ様は目を見開くと優しく笑った。
その笑顔にまた心臓が鳴る。
「ありがとう」
「えっと……」
顔が熱くなる。
顔を伏せるとリオ様は口を開いた。
「この街で女の子は、君だけなんだね」
「はい……」
「そうか」
「でも寂しくありません。私にはここの人達がいつも傍にいてくれたから」
そう言うとリオ様はフッと笑った。
「ねぇ、君の名前聞いてもいいかな?」
「セナ……です……」
「セナか。良ければまたここに来てもいいかな」
「え?リオ様が、嫌でなければ……」
「嫌じゃない。ここの人達は城にいる奴らよりも安心出来る。そして温かい。気に入ったよ」
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