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ブン――
そんな何かが振り回される音がする瞬間、持っている魔力と感覚を総動員し、肉体強化、回避に回す。
前方に一回転――二回転、蹴り出しが多少遅かったが少しは後ろの強力な脅威から離れられるだろう。
後ろを向き、警戒する。
その視線の先には黒い巨体、魔物――ロウベアが存在した。
聞いた話により3,4回り小さいことがわかる…。
肉体的には大人にしか見えないがこの魔物にとっては子供なのだろう。
この世界には様々な仕事を仲介する”ギルド”が存在する。
その中で言う魔物の格付けで行くと下から四番目、上から五番目のランクCの魔物だ。
ルンディは退くか…そう考えた時、ふと止まる。
この先、これ以上の敵が出たとき、どうするのか。
いや、逃げられればいい。
だがもし、何らかの状況で逃げられない場合は?
今、ここで奴を逃して、村まで追ってきたとして、他の村人が犠牲になるかもしれない。
それならまだましだ。
自身の肉親、癪だが自身の妹にまで危害が及ぶかもしれない。
此処で生かしておくわけには…―――
ルンディの思考は前から今に掛けて、これほど考えたことも無いだろう。
覚悟は決まっていた。
此処で殺す、出来れば成体のロウベアも殺しておければなおよし。
目を閉じる、息を整える。
ロウベアが走ってくるが気にしない。
魔力を整え、相手を倒すイメージだけをする。
ルンディの目には、最初に感じた恐怖は無く、穀潰しと言う言葉が似合わない程、強い意志を持っていた。
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