魔法少年とクマ

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「収束される会心の一撃【エア・ハンマー】」 極限まで圧縮された空気が、ロウベアの隙だらけの脳天に突き刺さった。 グシャリ―――。 最期はあっけなく、散った。 Cランクと言えど、気を抜けばこのありさま。 ルンディの魔力は穏やかであった。 ロウベアの頭を粉砕し、近くの折れていない木に寄りかかる。 「倒したが――魔力の消費が激しい…。もう一匹来るな」 先ほどのロウベアの放ったキングクライ、それの数倍の威力を持つ咆哮が森の奥からルンディの体に纏わるように放たれた。 ロウベアの凶悪な攻撃を避け続けるルンディ。 その顔はもはや真っ青で、魔力も持たなくなっていた。 対する大人のロウベアは、ボロボロで、黒い巨体には至るところに傷跡や切り傷が残り、牙も片方折れている。 エアハンマーを数回決め、やっと折れた牙であった。 子供と大人、ロウベアの実力は天と地以上にあった。 強力な肉体、【キングクライ】、何より大きさが違った。 子供のロウベアの幾回りも大きいロウベアの体は、尚、素早く、そして力強かった。 ルンディは相手にさほど威力の無いエアハンマーをぶつけ、後ろに跳ぶ。 対するロウベアも威力のないエアハンマーで吹き飛ぶ。 中級と上級、これを連続で唱えるルンディを駆け出しの魔法使いなどと呼ばないであろう。 あとは効率よく、複数撃ちだし、全力を出すこと出来れば、まさにとてつもない才能を持つ持ち主になれるだろう。 「ハァア!【エアハンマー】!!」 全力、それに全てを託し、込め、打ちこむ。 放たれた空気の圧縮された槌は、ロウベアの脳天を突き破り、鮮血の噴水を生み出した。 時間はさほど経っていなかったが、予想していた8分を大きく超えた、30分ほどの戦闘だった。 その結果、ロウベアを狩ることに成功した。 残り少ない魔力を回復するべく、自身のバッグにある自作の薬をルンディは取り出した。
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