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「いつか、いつか行くだろう。そう思っていたんだ」
父の顔は憔悴したような、熱し終えた後のロウソクの様な、何とも言えない顔をしている。
「だから、お前には何も出来なかった私からのお前への少しかもしれないが謝罪と多大な感謝をお前に…」
袋は軽い、だが見覚えがある。
アイテムボックスの魔法
物などを収納する空間を作り出す魔法。
それをこの袋や入れ物に刻みこむことをアイテムボックスの刻印と呼ぶ。
「それはアイテムボックスの刻印と呼ばれる刻印を刻んだ袋だ、他にもいくつか刻印を刻んでもらっている。まぁ刻印の説明は本を読んでいたお前には必要ないだろうな」
今までに見たことのない父の顔を見る。
「これ…高かったんじゃ…?」
「なぁに、金貨数枚程度さ」
白金貨、金貨、銀貨、銅貨、銭貨。
五つに分けられた金銭の区切り。
四人家族であるルンディに一家にとって金貨一枚は半年分の食事代にもなりうる。
つまり
「僕の為にお金を貯めてくれていた…と?」
「お前の為…ふっ、お前の為、そうだな。確かにそう言えるかもしれない。だがそんなたいそうなものでもない。今までの分、謝罪して許してもらおう、そんなくだらない気持ちが混じった考えさ」
父の顔は、消えたランタンの火が無くともルンディは理解していた。
「ありがとう、大事にするよ」
「そういってくれてありがたい。ふふ、これで少しは、気も晴れた。さぁ行け。商人たちもそう待ってくれまい。荷物は多少入れておいた。数日程度なら持つほどなら水分も食料もあるだろう。金銭の類も多少入れておいた。あまり無茶するなよ」
そういって、父は出て行った。
「父さん、ありがとう」
ルンディは父が出てから多少経ったのち、玄関に行き、靴を履き替え、商人たちとの待ち合わせである場所に向かった。
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