閑話-親愛であり信愛する兄に-

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おにいちゃん、そう、兄。 物心ついてから、さほど経たない期間の内に、私は兄を感じ始めた。 理解はしていたが感情は追いつかない。 胸焼けの様な何とも言えない気分にするこの気持ちでありこの感情はどう表現するべきか、私には分からなかった。 お兄ちゃん、お兄ちゃん。そう着いて行くことしかできない自分だった。 今も、根本も何もかも変わらないのかもしれないけれど。 そう、お兄ちゃんは私の全てだった。 お母さんに怒られている時も、お父さんに叱られる時も。 いつも庇い、守ってくれた。 ある時を境に、劇的に兄の態度が変わった。 いつもはしてくれることも、何もしなくなったりした。 逆に、村の人たちからの目線も変わった。 可愛がるような視線は変わらず、少なからず気持ち悪い、温い視線や、哀れな者を見る視線、そして可愛がる、という点では、それ以前の数倍にも増えた。 仕事が、出来た。 力は大人の人よりあった。 頭も良く、兄に色々教えて貰ったこともあってか、村人が出来ないことも出来ていた。 私が、私の中に眠る力に気づくのも、さほど遅くなかった。
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