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それから、お兄ちゃんに対する扱いが酷くなっていた。
昔の状態を知れば、悪化していたというのが正しいかもしれない。
皆、頭も良く、偉く、尊く、それこそすべてを見て照らす空に昇る太陽の様にまぶしい、そんな兄を"穀潰し"と言っていた。
最初は意味が分からなかった、意味を知り、余計に意味が分からなくなった。
村人の何万倍も賢く、尊く、絶対的な存在である兄を、あろうことか凡人以下の存在が穀潰し、そう蔑んだ。
だが、お兄ちゃんは優しかった。
穀潰しと言われても、気にしない兄を好きだった。
お兄ちゃんと過ごす日々で気づくこともあった。
私の、おかしさに。
兄より計算は早くなり、肉体も大人を超え、偶にくる冒険者の剣を使えば使用者を圧倒することもあった。
何より、自身に秘められた魔法の力が、兄よりも幾倍も強いことに。
だが、別段、侮蔑や軽蔑の気は起きず、それより、余計に兄を素晴らしいと思う。
愛らしいと思え、素晴らしいと思い、絶対的だと思う。
兄は、そう、この世界の頂点であり、私はそれに従う姫。
そう信じて、疑わない、今も、昔も、これからも。
嗚呼―――兄への気持ちは募るばかり、そう、今は夢の中なのだろう、こんなに素晴らしい、兄への――――そうだ。
寝る前に、お兄ちゃんに抱きしめて貰った。
今度はこっちから抱きしめて上げよう、絶対に、離さないように。
早く夢から覚めて、お兄ちゃんに逢いたい――――。
ルナの狂気は、夢の中でも変わらず、一途に兄のルンディを慕い続けた。
そう遠くない未来、ルナは癇癪を起こす。
そして行動する、自身の兄であるルンディに逢うために。
もはや思考も異常、ルナの精神は、発達し過ぎ、幼すぎた。
兄と妹はまたそう遠くないうちに、再会するのかもしれない。
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