穀潰しと魔力

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「ルンディ、ここにいたのか」 ルンディと呼ばれた少年は、濁ったような眼を背中の相手へとやった。 「ルンディ、お前はあまり動くな、お前の体は弱い、大きめの町ならともかくこんな小さな村で体調を崩されれば手の施しようがない。あまり動かないでくれ」 そういう者は、体つきはかなり良く、鍛えられた肉体をしていた。 男、ルンディの父である。 彼は背中にクワを持ち、ルンディを憐れむかのような眼で見ている。 「…僕はこの村を出る」 ルンディの常に無表情、少し強引に言い換えれば不機嫌そうなヘの字の口元は薄く開き、彼の肉体からは考えられないような言葉を吐き出した。 「…ルンディ?どうしたんだ、お前の体は確かに不健康ではないが体力と言う面で見れば子供と同じか、それ以下程度しかない。月に一度来る商人たちの馬車に乗せて貰ったとしてもその体ではすぐに倒れて、魔物に食われるか追い剥ぎに盗まれるか、そんな未来しかないぞ」 ルンディの父は焦ったような、少し汗を流しながら彼に力強く言い聞かせた。 「そのために…そのために僕はこの力を鍛えた」 そういうルンディの体には全く”魔法”に対する適正が無い父ですら見えるほど濃い湯気のようなオーラがにじみ見えていた。
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