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ルンディの妹、名はルナと呼ぶ。
名なんても言うものは簡素に決められた、満月の狂気が満ちるほどの綺麗な三日月が、ある夜だったという理由。
その狂気の呪いか否か、ルナは兄であるルンディの異常と言えるほどの懐きを見せた。
それ故に、ルンディは全くと言うほど自身の妹であるルナを可愛がることは無かった。
それだけならまだよかった。
そのルナの持つ力は凄まじかった。
肉体に関しては大の大人の数倍。
知力に関しては村の中でもっとも頭の良かったルンディを遥かに超えるほどの記憶力、観察力などを持っていた。
その上美貌に関しては言うまでも無く、可愛らしい、それこそ貴族どころか王族ですらが見ればこぞって傍に置きたくなるような容姿である。
だが、唯一の弱点とも言えるのが兄のルンディであった。
ルナにとっては兄の一挙一動こそ大事であり、ルンディに奉仕することに何ら疑問を抱かないのである。
それこそがルンディにとって一番の悪因だった。
近くにその位がかけ離れた存在がいる、その上その存在に頼られ、懐かれている。
他の村人にとっては面白くない、使えない子供が何故ここまで好かれるのか、村人は使えない子供であるルンディを罵倒し、蔑み、妬んだ。
太陽の下で過度な動きをするとすぐに倒れ、使えない―――それこそが穀潰しと言われる由縁でもあった。
それだけなら間違ってない、そう笑えたかもしれない、だがルナの持つ自信を大幅に超えるその力の差を見ると絶望した。
極限まで高まる思い、それは劣等感だった。
アイデンティティである知力を簡単に、蟻を潰すかのごとく塗り替える。
魔力を察知できるようになってからは余計だ、自分が1の魔力を持っているのだと考えれば自身の妹であるルナには1000の魔力を持っている。
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