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もはやルンディの心には、なにも残っていなかった。
そのあとの行動は早かった、自身の魔力は少ないわけでは無い、むしろ多いくらいだ。
そう知っていたルンディは魔力の操作に日々を費やし、いまこの地獄であるこの村と言う閉鎖された空間から抜け出すために過ごしていた。
「ルンディ…迷惑をかけて済まなかったな、いろいろと。だが恐らくルナはお前を追いかけるだろう。私たちを皆殺しにしてでもな」
そう言う父親の目は据わっていた。
「お前に渡すものがある、ルナの方はしばらく抑えてみよう。だがそう長くは無理だ。私はお前に自由に生きてもらいたい。確か商人たちの来る日は明日だったな。明日乗って行け、一日程度なら私たちの話を聞くだろうが二日は無理だ、振り切って出ていくだろう」
そこからの父親の手助けは軽やかな物だった、理解していた、そう言っていたあたりやはりこの選択を選ぶことは最初から想像されていたのだろう。
「…ありがとう、父さん」
「さぁ、ルンディ、ルナにばれないよう荷物を少しずつ整理していきなさい。明日、商人たちが出る夕刻ごろにこっそり乗せてもらえるよう頼んでおこう」
その時に渡す物がある。そう言ってルンディの父親は落ちたクワを拾い上げ、また畑に向かって歩き出した。
ルンディもその時にはもう、家へと足を向けて歩き始めていた。
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