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もしかしてオレが風紀委員に虐められてるとでも思ってるのか?
「あの、離してくんない? 別にオレ虐められてないし」
ソイツの二の腕辺りをポンポンと軽く叩くと、ソイツは腕の力を緩めてオレの身体をそっと解放した。
「風紀の指導はいつもの事だし。でも、ま、ありがとな」
お礼を言うと、ソイツが無言で頷く。
いきなり腕を掴まれて抱き締められたから、今になってやっと顔が見えた。
真面目そうな黒髪に、少し目にかかるくらいの長めの前髪。
うん、顔は悪くない。
段差の所為で身長差があったのかと思ったが、同じ段に立っている事に気付いて『デカイな、コイツ』とちょっと悔しくなったけど。
しかもネクタイの色からして、オレより年下の一年生か。
いや、オレもまだ伸びるし。
「桜庭椎馬」
「ハイハイ、生徒指導室でいいの?」
腰も痛いし逃げるのも面倒だ。
素直に従うしかない。
もう一度生徒会役員のソイツに「ありがと」と声を掛けると、やっぱり無言だったけど。
「……」
口の端を少し上げて頷いていた。
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