第1話

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もしかしてオレが風紀委員に虐められてるとでも思ってるのか? 「あの、離してくんない? 別にオレ虐められてないし」 ソイツの二の腕辺りをポンポンと軽く叩くと、ソイツは腕の力を緩めてオレの身体をそっと解放した。 「風紀の指導はいつもの事だし。でも、ま、ありがとな」 お礼を言うと、ソイツが無言で頷く。 いきなり腕を掴まれて抱き締められたから、今になってやっと顔が見えた。 真面目そうな黒髪に、少し目にかかるくらいの長めの前髪。 うん、顔は悪くない。 段差の所為で身長差があったのかと思ったが、同じ段に立っている事に気付いて『デカイな、コイツ』とちょっと悔しくなったけど。 しかもネクタイの色からして、オレより年下の一年生か。 いや、オレもまだ伸びるし。 「桜庭椎馬」 「ハイハイ、生徒指導室でいいの?」 腰も痛いし逃げるのも面倒だ。 素直に従うしかない。 もう一度生徒会役員のソイツに「ありがと」と声を掛けると、やっぱり無言だったけど。 「……」 口の端を少し上げて頷いていた。 .
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