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「桜庭、またお前か」
生徒指導室でオレを出迎えたのは、この秋に風紀委員長に任命されたばかりの同じ二年の薬師堂。
銀縁のメガネを指で押し上げ、呆れたように溜め息を吐いている。
「またって何だよ。オレ、何もしてないし」
指導室の真ん中に置かれた長机の横にあるパイプ椅子に腰掛けると、薬師堂もその隣に座って来た。
「何もしていない者が風紀委員から逃げるのか?」
「勝手に追い掛けて来たんだよ」
「そのカバンの中身を調べたら嘘かどうかすぐに解る。改めさせてもらおうか?」
座る時に床に下ろしたカバンを、薬師堂から隠すように足でそっと引き寄せる。
カバンの中にバッチリ証拠品が残ってんじゃねーか。
ごみ箱に捨てる余裕無かったし。
「相手は?」
「名前は知らない。三年生だったな」
長机に肘を付き、薬師堂が眉間に皺を寄せながら「三年か」と呟く。
「余計な詮索すんなよ。合意なんだし」
「解っている。合意でなければ、お前は相手をしない筈だからな」
「そういう事」
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