エジソン異聞「終焉の霊歌」

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スピリチュアリズム(心霊主義)を疑っていた。 人間の魂はエネルギーだ。20世紀は科学の世紀になる筈だ。 だが、その信念を覆す出来事によって、私の人生は大きく変わった。 そして、ひとりの友を得た。 発明王トーマス・アルバ・エジソンの人生が終焉を迎える今、それを語ろうと思う。 それは私が伝記のために、蓄音機で口述していた時だった。 「私が普及させた白熱電球こそ、叡智の神アフラー・マズダーの光なのです。 科学という叡智の光が、昏い闇を追い払ったのであります」 そう、私が発明した蓄音機と白熱電球が、亡き妻ナンシーが嫌いだった闇と静寂を一掃した。 ナンシーは蒙昧な迷信を信じる妻だった。 新しく台頭した心霊主義を盲信していた。 当時盛んだったブラヴァツキーという女の交霊会に、私も一緒に出席させられたものだ。 「信じる心が無い貴方に、天国の門は開かないわ」 ナンシーの口癖だ。疑う心が私の原点なのに。 私はそれが嫌で、仕事を理由に家庭を疎かにした。 ナンシーは賛美歌が好きだった。家事の時に、良く鼻歌を歌っていた。 常に鼻歌を〈ふんふんふ~♪〉と歌っていて、それが嫌だった。
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