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「エジソン先生、ソルフェジオ周波数はご存知ですか?」
「ソルフェジオ周波数?」
「中世のグレゴリオ聖歌に見られる音階の周波数です」
「そういえばこの鼻歌、霊歌のように聴こえますね」ナンシーの賛美歌を想い出す。
「ああ、良い指摘です。知ってますか? 霊歌とはスピリチュアルという意味があることを」
ここでもスピリチュアルか。
「この鼻歌に、そのソルフェジオ周波数が使われているのです。『528Hzのミ』と『741Hzのソ』から構成されていまして、『528Hz』は愛の周波数と呼ばれているのですよ」
そう言ってドイル卿は、鞄から二つの音叉を取り出した。
その音叉を交互に鳴らすと、成程あの霊歌に似て聴こえた。
「では、この霊歌は天国の調べだと?」
「そうなんですが、『528Hz』と『741Hz』を同時に鳴らすと起こる不協和音を『デビルス・トーン(悪魔の音)』と云うそうです」やや声を落とし「その不協和音は、人間の精神や身体に悪影響を及ぼすのです」
「……そういえば、落ち着かない旋律です」そして心をざわつかせる。
〈ふんふんふ~……〉
部屋の隅で霊歌のリフレーンが、幽かに溶けて闇に消えた気がした。
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