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泣いていると気付いたのと、通りから来る自転車の人にばれないように下を向くので精いっぱいだった。
ポケットから携帯を取り出し、小島に電話をかける。
すぐ近くにいる。迎えに来てもらいたかった。やはり、泣いてでももう少し話し合いたい。
数コール鳴らしたが、出てはくれなかった。
この恋も終わった。終わりかけていることにさえ気づかなかった。
途端に冷静になれて、携帯をしまう。が、数歩もあるかないうちに携帯が振動する。
急いで取り出してみると、そこに描かれた名前は小島だった。
「ごめんごめん。どうした?ゴミ箱探していたら気付かなかった」
本当に別れたのだろうか、と疑ってしまうほどに淡々とした声だった。
「やっぱり、駄目かも」
「え?」
「別れたくない」
どうして、顔を見て言えなかったのだろう。受け入れるそぶりなど、見せなければよかった。
子どもの前だろうと、公園だろうと、泣けばよかったのだ。
小島を困らせたって、構わなかった。どうしてそれができないのだろう。
「えー!」
夏樹がそんなことを言うとは想像もしなかったという驚きようだった。
「うーん、でも、ちょっと難しいかな」
「ねぇ別れたくないよ。もうすでに食欲もないよ」
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