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「仕事で悩むと胃が痛いって言っていたじゃん。だから、具合悪くならないか心配だったんだよね。大丈夫?」
「今は痛くないよ。でも、今週痛くなるかもしれないよ」
「うーん、でも、何もしてげられない」
太鼓の音が電話の向こうから聞えてくる。かなり近くにはいる。
それでも、待ってて行くから。という言葉はもらえない。気持ちはこんなにも離れてしまっている。
「ねぇ、私に他の人と結婚してもらいたいの?何年かかっても?」
身勝手な質問だ。
答えはイエスに決まっている。今更言う質問でもない。付き合う前に言うべきだった。私と結婚してくれるよね、と。
重いと思われることを恐れ、本心を隠したあだがきたのか。
「うん。お互いにその時は相手がいるといいね」
やはり、小島は夏樹が嫌なのだ。結婚するのが何年後であったとしても、夏樹に待っていてもらおうと思わない。
そんな残酷な言葉を投げられても、嫌いになれないんて恋愛とはなんと疲れるものなのだろう。
一つ過去を話すごとに、自分の分身を渡してきた。
ひとつ一緒に笑うごとに、二人の愛の家の部品を買っていた。
分身は帰ってこない。部品は手元に残って処分できない。
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