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半ば、苛立ちのような気持ちを抱えて、夏樹は携帯を鞄に放り込んだ。
こんなにも簡単に別れがやってくるなんて、誰も教えてくれなかった。
正志に、心の内を話せといわれなければ、その覚悟でも来なかっただろう。
だが、夏樹が話そうとする前に、小島は別れたいと言い出した。
夏樹の雰囲気を感じたわけではないだろう。
小島の雰囲気のほうがおかしかった。
そこで、はっと気付かされる。
正志の話は、小島の前でしたことがない。だが、それは恋愛感情を持っていたという話をしないだけだ。
誤解されたのではないだろうか。
駅に向かっていた足を、急きょ公園に向けようとする。
公園にいなければ家に行けばいい。
数歩歩いて、だが再び立ち止まる。
このぐしゃぐしゃの顔でアパートに行けば、話し合いにはならないかもしれない。
そもそも、正志のことも夏樹の思い込みかもしれない。
あの小島が、そんな小さなやきもちで別れを切り出すはずがない。
だが、別れの理由はなんだ。顔をしかめる仕草と皿洗いだ。
案外ものすごく細かい性格なのかもしれない。だとすれば、正志の件もありうることだ。
以前に分かれてきた恋人たちとは小さな喧嘩をしてきたが、皿などさらに小さなものに思えた。
だが、何もしてあげられない。この言葉に込められた本心を思うと、彼に会いに行こうとは思えなかった。
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