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「え。それで、別れちゃったの?」
夏樹は、今日もまた小屋の中で陶芸をしていた。
今日こそ、陶芸をしたいと思える日はなかった。
三日前、小島と別れてから食事もろくに喉を通らないし、夜も数時間しか眠りにつけない。
それも、夢を見ては目が覚めると言う浅いものだ。
「別れた、っていうんでしょうね。これは。私は何が悪かったのか全く分からないです」
「お皿に、顔の表情か。確かに、恋愛ってフィーリングもあるから何とも言えないけど、不思議な理由だね」
「あり得ないですよね。お皿ですよ。言ってくれれば、丁寧にやるのに」
正志が、いつものように轆轤を回す手を止める。
悩むように数秒止まったが、すぐに動かし始める。
東の原稿は出来ている。彼は畑で野菜を採集しながら、小屋の方は見向きもしない。
未だに、あゆみとの件は決着がついていないようだ。
「でも、もしそこで直したとしても、他の件で細かいことが気になるかもしれないよ。そうしたら、一緒にいる限り心が安らぐことはない」
それは、何度も夏樹も考えた。
回していた轆轤を止め、夏樹は土の塊を掴む。
そして、テーブルに置いた。
すべてが歪んで、形になどなるはずもない。
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