第7話

22/37
前へ
/206ページ
次へ
※ 「え。それで、別れちゃったの?」 夏樹は、今日もまた小屋の中で陶芸をしていた。 今日こそ、陶芸をしたいと思える日はなかった。 三日前、小島と別れてから食事もろくに喉を通らないし、夜も数時間しか眠りにつけない。 それも、夢を見ては目が覚めると言う浅いものだ。 「別れた、っていうんでしょうね。これは。私は何が悪かったのか全く分からないです」 「お皿に、顔の表情か。確かに、恋愛ってフィーリングもあるから何とも言えないけど、不思議な理由だね」 「あり得ないですよね。お皿ですよ。言ってくれれば、丁寧にやるのに」 正志が、いつものように轆轤を回す手を止める。 悩むように数秒止まったが、すぐに動かし始める。 東の原稿は出来ている。彼は畑で野菜を採集しながら、小屋の方は見向きもしない。 未だに、あゆみとの件は決着がついていないようだ。 「でも、もしそこで直したとしても、他の件で細かいことが気になるかもしれないよ。そうしたら、一緒にいる限り心が安らぐことはない」 それは、何度も夏樹も考えた。 回していた轆轤を止め、夏樹は土の塊を掴む。 そして、テーブルに置いた。 すべてが歪んで、形になどなるはずもない。
/206ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加