第7話

25/37
前へ
/206ページ
次へ
「正志さんの、この小屋も汚いですよね。掃除しています?」 夏樹は立ち上がると、棚の上に積もった埃を人差し指で拭きとるように取る。 「いや、やっぱり汚いかな」 「汚いですね。でも、私は几帳面な方でもないし、全然気にならないんです」 話の筋が見えないのか、正志が顔をしかめ、首をかしげる。 座ろうとして、夏樹は椅子を数回はたいた。 埃が舞う。いや、土の粉も混じっているころだろう。 「小島の部屋は、いつも片付いていました。でも、洗面所には髭の橇かすがのこっているし、お湯を沸かす時のポットは、上に埃がたまっていました」 「うん。つまり、彼も綺麗好きではない」 「というか、別れの理由がお皿の洗い方なんだったら、一言いってやりたいんです。あんただって、汚いのに私は我慢していたよって」 「我慢してたんだ」 「うーん、実際には、目についただけで全然気になりませんでしたね。掃除をするわけにもいかないし」 食器も放っておけばよかったのだろうか。 何もしないで、家で座っていればよかったのだろうか。だが、できる範囲でやろうとするのは間違いではないはずだ。
/206ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加