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「正志さんの、この小屋も汚いですよね。掃除しています?」
夏樹は立ち上がると、棚の上に積もった埃を人差し指で拭きとるように取る。
「いや、やっぱり汚いかな」
「汚いですね。でも、私は几帳面な方でもないし、全然気にならないんです」
話の筋が見えないのか、正志が顔をしかめ、首をかしげる。
座ろうとして、夏樹は椅子を数回はたいた。
埃が舞う。いや、土の粉も混じっているころだろう。
「小島の部屋は、いつも片付いていました。でも、洗面所には髭の橇かすがのこっているし、お湯を沸かす時のポットは、上に埃がたまっていました」
「うん。つまり、彼も綺麗好きではない」
「というか、別れの理由がお皿の洗い方なんだったら、一言いってやりたいんです。あんただって、汚いのに私は我慢していたよって」
「我慢してたんだ」
「うーん、実際には、目についただけで全然気になりませんでしたね。掃除をするわけにもいかないし」
食器も放っておけばよかったのだろうか。
何もしないで、家で座っていればよかったのだろうか。だが、できる範囲でやろうとするのは間違いではないはずだ。
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