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小島が仕事から帰ってくるのは六時半ごろのはずだった。
家の前で待っているのは怪しまれるかと思い、アパートの近くにある公園で小島を待つことにした。
日はずいぶんと伸び、最近では七時過ぎまで明るさが残っている。
颯爽と歩いてくる小島を見つけたのは、明るかったおかげかもしれない。
「おーい」
そこで夏樹の顔を見て、逃げるようであれば終わりだと思った。
だが、その声をかけるにも相当の勇気が必要だった。
土管に寄り添うようにして待ったのは、姿が見えないようにだ。
もし勇気がでなければ、隠れたまま、小島が通り過ぎるのを待つつもりだった。
人影が見えるたびに、すっと頭を隠し、覗くようにして顔を確認した。
後のアパートの窓から見れば、十分不審人物だったことだろう。
心臓があばれ、本当に会うべきか何度も問いかけた。
逃げたくなる衝動にかられ、諦めて帰ろうとおもった。
だが、三十分近く経ってからその姿を目にしたら、意外と冷静でいられる自分に驚いた。
「え、どうしたの。え、すごい待ったでしょう。いつ来たの?」
やっぱりだ。驚きながらも、拍子抜ける反応。
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