第7話

28/37
前へ
/206ページ
次へ
※ 小島が仕事から帰ってくるのは六時半ごろのはずだった。 家の前で待っているのは怪しまれるかと思い、アパートの近くにある公園で小島を待つことにした。 日はずいぶんと伸び、最近では七時過ぎまで明るさが残っている。 颯爽と歩いてくる小島を見つけたのは、明るかったおかげかもしれない。 「おーい」 そこで夏樹の顔を見て、逃げるようであれば終わりだと思った。 だが、その声をかけるにも相当の勇気が必要だった。 土管に寄り添うようにして待ったのは、姿が見えないようにだ。 もし勇気がでなければ、隠れたまま、小島が通り過ぎるのを待つつもりだった。 人影が見えるたびに、すっと頭を隠し、覗くようにして顔を確認した。 後のアパートの窓から見れば、十分不審人物だったことだろう。 心臓があばれ、本当に会うべきか何度も問いかけた。 逃げたくなる衝動にかられ、諦めて帰ろうとおもった。 だが、三十分近く経ってからその姿を目にしたら、意外と冷静でいられる自分に驚いた。 「え、どうしたの。え、すごい待ったでしょう。いつ来たの?」 やっぱりだ。驚きながらも、拍子抜ける反応。
/206ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加