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そうだろう。どれほど、この問題を長い間一人で抱え込んできたのだろう。
誰にも相談できず、いつ気付いたのだろう。
誰が、彼を支えてあげているのだろう。
「私も壁を感じていた。でも、それはあなたが自分を守るための生命線だったんだね。ごめん、この間、私ひどいことを言ったよね」
思いだす。公園で、別れ話をされた悔しさからもあって、彼を責めた。
自分がひとつ自分の過去を話すと、相手も話してくれると信じていた。
でも、小島は話してくれない。壁を感じていたのを相手のせいにした。
だが、それは彼にとってはずっと作り上げてきた防衛線なのだ。
一番知られてはいけないと思っていたのは、夏樹にだろう。
「ううん。自分を隠すことが癖になっているんだ。だから、就職したときに営業をして、上司にお前はカラーがないって言われたんだ。小島っていいやつだけど、それで終わりでいいのかって。うるさいでも、エロいでも、子どもっぽいでもいいって。」
夏樹も思いだす。営業をしていた時に同じことを言われた。
自分の色を出せ。個性を出せ。カラーを見つけろ。出せない人間はどうすればいいのだ。
「最初は、何を言われているのかわからなかったんだ。でも、考え出したらきりがなくて」
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