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その隣にいる細い男は背も小さく、だが人差し指一本でピザの皮を回しているのは、いつかテレビで見た光景だ。
「すごい!」
思わず、夏樹と小島の声が揃う。顔を見合わせて笑っていると、奥からメニュー表を小脇に抱えた少女が走ってきた。
秋葉原にいそうなメイドの恰好をしているのはいささか店内では不似合いだが、細身の体とくるりとし大きな瞳、そして頭頂部で綺麗にまとめたお団子頭の少女は人目をひく美少女だった。
「いらっしゃいませ。お二人ですか?」
「あ、予約をした小島です」
夏樹と初めて会った時と同じように、小島がお辞儀をする。
「お待ちしてました。こちらへどうぞ!」
やはり、空いていたひと席に通される。ソファに座ってメニューを見ると、小島は夏樹の斜め前に座った。
以前、テレビ番組で親しくなるほど異性は正面に座るとやっていたことを思いだす。足を自分のいるほうと逆のほうへ組んでいるのも同様だ。
ちらりと着席した場所から目を戻すと、再びメニューを見る。
「グラタンもパスタも、ピザもおいしそうだね」
「それでは、パスタとピザを頼んで半分こしましょうか」
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