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悔しさよりも焦りが先立ち、手に職をつけようと覚悟した以上、成長する場所に飛び込むしかなかった。
地元で一社、フリーペーパーを発行している会社を見つけ、求人募集があったわけでもないのに、自ら飛び込み、ライターとして雇ってくれと頼み込んだ。
今思えば、雇ってくれたことも奇跡だし、思わぬことに楽しさを見いだせたことも奇跡だった。
こまごまとイベントや自分物インタビューの記事をこなしながら一年が経った頃、ふいに編集長から投げられたのが東が行うニンニクの育て方講座だった。
東は作家として本を出しながら、地元新聞紙や、夏樹の会社でコラムを連載していて、それは夏樹も知っていたが、いちライターにすぎない自分が会うことはないだろうと思っていた。
実際、常に彼と連絡をとるのは編集部で、原稿も編集の人間が取りに行くか、ファックスで流されていたのだ。
が、ある日取材の前に会社により、新しく始まったコーナーの打ち合わせ件研修をしていた時だった。
編集長の内田は少々気が荒いのは分かっていたが、彼女は部屋に入ってくるなり椅子を蹴飛ばしていった。
「やんなっちゃうよ。編集の梅木くん。東先生の原稿確認しないで校了しちゃったんだもん。ミスがでちゃったよ」
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