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「あれ、梅木さんって先週で退職しませんでしたっけ」
他のライターの言葉に、内田がくってかかる。
「そうだよ。あの野郎。最後だと思ってチェックを甘くしやがった。しかし、前からへぼいことばっかやらかしてたから」
「あぁ、たまにライターが行けなかった時に取材に出てましたけど、文章もひどかったですよね」
「文章だけじゃないよ。写真だってめちゃくちゃ。妖怪みたいなじじいをアップで撮ってくるし。なんだかんだ見た目だって重要なんだからさ」
内田は言葉も荒い。50を過ぎているが、同年代の取材対象者でも普通に『じじい』というのに最初は驚いたが、もう慣れてしまった。
「あ、そういえば、夏樹。あんたニンニク講座いつだっけ?」
「三日後ですけど」
嫌な予感がした。ニンニク講座を中止にしてくれればありがたい話だが、この流れからはそうもいかないだろう。
編集のつけは、編集で解決してくれるのが当然と思うが、そんなことはこの会社で通用しない。
「一応大きな先生だからさ、夏樹適当にお菓子でも買って持って行ってよ。経費から千円出していいから」
「はぁ」
『いいえ』という答えは存在しない。そもそも、原稿でチェックミスくらいでお菓子という大層なものが出てしまうのだから、それがこの会社の小ささを表しているようでも、地元密着という言葉が汚くも感じた。
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